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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

イラン・ボーダーまでのチケット

                        ≪九月二十八日≫        ―壱―

   太陽が昇る前に目が覚めた。
 唇がカサカサしてて痛みを感じる。
 砂漠の中を走ってきたからだろうか。
 ベッドが柔らかすぎたのか、昨日までのバスシートが応えたのだろうか。
 やたらと、肩から腰にかけて、軽い痛みが走る。

   昨日の夜、日本から持って来ていた、サロンパスを貼って寝たから、このくらいの痛みで治まっているのかも知れない。
 シャワーを浴びて、砂漠の砂を洗い流して眠ったから、気持ちの良い朝を迎えることが出来た。
 快食快便だ。

   午前七時半。
 太陽が顔を見せ始めると、少し暑くなってきたように思う。
 大きな窓から、直接強い陽ざしが射し込んでくる。
 窓を良く見ると、鍵が壊れていて使い物になっていない。
 これでは、侵入者を防ぎきれないではないか。

   二階とは言え、外はベランダがぐるりと取り巻いていて、ほかの部屋から容易に侵入出来るようになっている。
 これでは、いくら入り口の扉に鍵を掛けていても、窓から入ってこれる為、安心して荷物を部屋に置いて出かけられないのだ。
 なんとも、物騒なホテルだ。

   我々旅人にとっての安らぎとは、部屋の奇麗さではない。
 最高の条件は、まず部屋に鍵が掛かる事。
 そして、二番目に安い事なのだ。
 それなのに、窓の鍵が壊れているとは・・・・。

                           *

   今日一日の目的は、イランへ入るバス・チケットを手に入れることと、銀行へ行き両替を済ませること。
 部屋で荷物の整理をしていると、モンゴル系の少年が”チャエ”を運んできた。
 その”チャエ”と昨日レストランから持ち帰ってきた”ナン”で朝食を取る。
 この”ナン”、一晩寝かせた為か、せんべいのようにパリパリなのには困った。
 それでも、喉に流し込む。

   ”チャエ”を運んできた少年の手を見てビックリ。
 オキシドールでも塗っているのか、両手とも赤黄色くなっていて、異様な匂いが鼻をついてくる。
 このホテルに入ってきた時から、異様な匂いがしていたのが・・・・この匂いだろうか。
 ホテルの主人にしてみれば、消毒の意味をこめて、従業員に全員塗っているのかも知れない。
 しかし、この強烈な匂いには、最後までまいってしまう。

                        *

   へラートのBankは、午前8時から開くということを聞き、早速朝の散歩がてらに行ってみる事にした。
 ホテルから10分ほど歩いた所に、”Afghan Bank”がある。
 中に入ると、早朝だと言うのに、すでにかなりの人数の旅行者だろうか、長い行列が出来ていた。

   窓口で用紙を受け取り記入し、TC(トラベラーズ・チェック)と一緒に、窓口の受付に放り込み呼ばれるのを待つ。
 イスに座って待っていると、旅行者は20~30人に、膨れ上がっているではないか。
 朝早く来て良かったと言うもんだ。
 そんななか、砂漠で一緒に野宿したフランス人の四人組に出会った。

       フランス人「ヤー!元気かい!」

   銀行は全くルーズだ。
 30分は待っただろう。
 ManeyChangeにこれだけ待たされるのは初めてだ。
 まるで日本の銀行のようではないか。

   銀行を出て、左に歩くと5分ほどで、へラートのMainにでる事が出来た。
 あれだけ探してもなかった、ホテルや土産物屋がずらりと、軒を並べているではないか。
 早速、イラン・ボーダー(国境)まで行っている、バス会社を探す事にした。

       会社「イラン・ボーダーまでは、ミニバスだけよ。そこまでよ。それ以上は行かないからね。」

   ガッカリして、どうしようかなー!とトボトボ歩いていると、ヨーロッパからアフガニスタンに来たと言う、日本人三人に出会った。

       日本人「ヤー!」
       俺  「こんちわ!」
       日本人「何処から来ました?」
       俺  「ネパールから陸伝いで来たんだけど、これからイランに入ろうと思って、バスを探してた所なんだ。」
       日本人「イランへ行くの。俺達は昨日イランから来たばっかり。」
       俺  「・・・・・。」
       日本人「イランへ行くには、イラン・ボーダーまで行って、イランのバスに乗り換えるよりないんじゃない。」

       俺  「へー!そうなの。」
       日本人「イランは酷いところだよ。イラン人には気をつけたほうが良いよ!」
       俺  「そう!有難う。」

   イランへ行くには、やはりミニバスに頼るしかないみたいだ。
 ミニバスの会社に行く。
 ミニバス、本当に小さなバスで、要するにマイクロバスの事だ。
 事務所に入る。

       俺 「すみません。イランボーダーまでいくらですか?」
       受付「50Afgだ。(350円)」
       俺 「何時に出ますか?」
       受付「朝の七時に出発だ。」
       俺 「じゃあ、明日の朝ここへ来れば良いんですね!」
       受付「ああ、そうだ!朝の6時30分頃までには、ここのオフィスまで来てくれれば良いよ。」
       俺 「六時半だね。ありがとう!」


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